料理研究家・引頭佐知さんが広告代理店に勤めていた若かりし頃、昼休みにいつも美しいハーモニーを聴かせてくれる2人の同僚がいた。1973年、その”川口っち”と”星のっち”は「星と川」として自主制作でわずか50枚のレコードを作り、「しんてん=親展」と名付けて親しい人たちに配布。プロデビューすることもなく、3人はそれぞれ別の方向に転職していった。
それから37年後の、2010年。
新宿の中古レコードショップで「しんてん」を手に入れた若者がいた。
このアルバムを一人で聴くなんてもったいない、と彼は大感激。なんと面識もない2人に連絡をとって、自ら「復刻」を申し出るのである。いや一口に復刻といってもその面倒な手間暇を思えば、自分のことでもないのに嘆息が出るじゃないですか。
今回そのCDを聴く機会があったのだが、確かにあの時代の音である。
誰もがマイ・ギターを手に歌っていた時代が、そう隠居にもございました。