母の引っ越し

 長く一人暮らしをしていた母が、少しずつできないことが増え、心細さを訴えるようになり、ついには介護付きホームに入居するに至ったのは、95歳の時でありました。ところが建物の老朽化につき、少し離れた場所に新築移転するとのこと。いやこれはたいへんなことになった、と慌てているのは古希近い息子だけで、本人はたいして苦にしていない様子。コロナで月に2回しか会えなかったのが、引っ越しの荷づくりやら荷ほどきやらで久々に濃密な時間が持てるのを喜んでいるふしがある。こちらが大汗かいて作業している横でとにかくしゃべりまくる。ほとんどがダメ出しである。オレは中学生か。

 介護認定の時、調査員とあまりにおしゃべりがはずむので、なかなか要介護がもらえなかった。三度の圧迫骨折で腰が曲がり、常時痛みを訴えるようになってからはようやく支援レベルから抜け出せたが、口だけなら隠居(私)の三倍は達者なのだ。

 土曜日、無事に本人の移動も済んで「今日はお弁当だったんですが、きれいに全部召し上がりましたよ」と早くも変わらぬ日常が始まっているが、こちらは本日、電話工事と荷ほどきの続き、水曜は住所変更の手続き、来週は介護用椅子の搬入、とまだまだやらねばならないことが控えている。その度にダメ出しをくらうのは、元気な証拠だとはいえ、いささか気が重いかもだよ。