ボーダー二つの世界

 1日たっても異界からもどってきたような感覚が抜けない、こんな映画は初めてである。まったく予備知識がないまま「ボーダー 二つの世界」を見た。正解だった。知っていたら初めから見ようとは思わなかったろう。

 旅客が歩いてくる長い通路に税関の制服を着たティーナが立っている。その風貌から目が離せないでいると、彼女は鼻をひくひくさせながら「そこの人」と声をかける。

 ”そこの人”はそれぞれにわけありである。麻薬犬のように鋭い鼻で嗅ぎ分けているのかと思いきや、それだけではないという。罪悪感や恥や邪悪なものたちを、彼女は感知することができるのだ。

 そしてその能力をかわれて警察と共に犯罪に立ち向かっていくという筋立てはまるでミステリーだが、原作があの「ぼくのエリ 200歳の少女」を書いたリンドクヴィストさんである、話はまったく予想だにしない方向に進んでいく。ティーナとともに僕らも、ボーダーを超えて共に激しく流されていくことになるのだ。途中で降りることもできたろうが、彼女の顔を不躾なほど見つめてしまった僕にはリタイアは許されない、ような気がしてしまったんだよね。

 第71回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリ作品。