マイナンバーカード顛末

 運転免許証から健康保険証までこれからはマイナンバーカードが必須、といわんばかりの喧伝攻勢に煽られて、そうなってからバタバタするのも嫌だし、とついにわが家でも申請に及ぶことになった。写真1枚あればパソコンからできるらしい。

 ところがその写真1枚のハードルが実に高い。

 お蔵入していたデジカメを持ち出すが、当然動かない。はて充電器はどこだっけ。バッテリーを充電している間に、SDカードを探し出さねばならない。両方そろったところで、いざ晴れの日を待つ。

 晴れである。服も着替える。玄関前で撮影に及ばんとするも一人ではできないので「おい母さんや」とパートナーを呼びつけて、慣れないカメラマンをさせる。

 さてSDカードをカードリーダーで読み込もうとするのだが、最新のMacBookAirにはそもそもUSBの口がない。USBが使えるハブを、迷い倒してアマゾンで購入。届くのをじっと待つ。届くや速攻で挿してみるが、なぜか何故なのかSDカードを認識しない。これではお手上げである。

 もう一台のデジカメを持ち出し、直接、コードでパソコンとつないでみる。おっと、その前に最新の読み込みソフトをインストールしておかねばならない。こうした一つ一つが、隠居にはちかっぱ時間がかかるのである。

 最新のM1チップ搭載Macは、フォトショップエレメンツが未対応ゆえ使えない (らしい) ので、結局、お蔵入り寸前のiMacを起動することになる。ええっと写真の転送はどうすればよろしいのか。

 写真の背景を切り取りできるだけ男前に加工する、のは得意分野である。

 完成した写真を申請画面上にドラッグ&ドロップすると、ようやく申請は完了。「個人番号カード交付申請書受付センター」から「申請受付完了のお知らせ」が届いた。

 ところがこれで安心してはいけない。

 9日たってから「申請内容不備のお知らせ」というのが届いた。「不備内容」はあらかじめ用意された文らしく、具体的な説明は何もない。仕方なくもう一度写真を撮り直すことになる。やれやれ。隠居は1回シュミレーションしておくとヘンにドキドキしないで済むので、これでよかったのかもしれないと自分に言い聞かせておく。

 そうしてきっかり1と月後に、小さな青い封筒に入った「交付通知書」が届いた。

 市役所での交付は予約制なので、ネットで一番近い2日後の予約をとる。暗証番号をあらかじめ考えてきなさいという。

 予定時間の10分前に市役所に到着。番号札を手に待っていると、ほどなく呼ばれて窓口へ。説明のあと、隣のブースで暗証番号入力と顔認証。声をかけられた担当以外の職員がちらと写真を見て「OKです」と言う。あまりのアナログさに笑うべきか迷っていると「マイナポイントがありますのでまた手続きしてくださーい」と送り出される。いやそれって、申込みは終わったのではなかったか。

 帰宅してから調べてみると、期限が1と月延期されたとのことである。「申し込んだ決済サービスを使うと25%分のポイントがもらえる」そうなので、せっかくだから申請しましょう。

 手続きにわざわざ市役所まで出向かなくても、ローソンのマルチメディアコピー機でできるらしい。操作方法をしっかり予習して、混雑を避けて朝の6時に行く。

 ところがマシンが「行政サービスの受付は6:30からです」と言う。うーむ老人はその30分を駐車場でじっと待っていられないのに。

 翌日、勇んで6:30に行く。「行政サービス」が無事に起動。続いて「マイナポイント」のボタンを押す。マシンが「マイナポイントの受付は9:30からです」と言う。もう早く言ってよぉ。

 4日め。手順のマニュアルを印刷してローソンマルチメディア機に立ち向かう。若者はこんなことを苦もなくサクッとできるのであろうか。だとしたら君たちは凄い。

 と言いながら入力した「決済サービスID」をマシンが受け付けない。調べてきたから間違っているはずはない。深呼吸するのじゃ。画面をよーく見る。見慣れないアイコンに気づく。うーむ、どうやら大文字にしないと受け付けてくれないようだ。

 あるときは大文字も小文字も関係ないと言い、あるときはそれくらい区別しないでどうすると言う。そんな理不尽さは嫌というほど見てきたはずなのに、思わず唇が尖る。

 いやー、慣れないことをやってみるのはなんともいい刺激になりますな。