ジョアン・ドナート

 Bossa Novaといえば、巨星アントニオ・カルロス・ジョビンに、並び立つジョアン・ジルベルト、といったところだが、もうひとりの天才と呼ばれながらいまいち輪郭のはっきりしないジョアン・ドナートJoão Donato については、これまでじっくり聞くということがなかった。ところが先日、「Piano Of Joao Donato - The New Sound Of Brazil 」(1965)というアルバムを耳にして、すっかりファンになった。この人の良い力の抜け加減がようやくしっくりくる年齢になったのだろうか。最近の朝のBGMはもっぱらドナートさんである。

 ついでに家にあるアルバムを年代順に並べてみよう。

 ボサノヴァの黎明期、1959年にはすでにアメリカに渡ってラテン・ジャズ・バンドで活動していたドナートさんが、一時帰国してレコーディングしたのが次の2枚。

 1963 Muito a Vontade ムイト・ア・ヴァンターヂ 28歳のセカンド・アルバム。

 1963 Bossa Muito Moderna ボッサ・ムイト・モデルナ 

  次の隠居イチオシのアルバムは、アメリカ録音です。

 1965 The New Sound Of Brazil  完成度の高い、これはまさに「名盤」でしょう。

 1970 A Bad Donato 

  1972年暮れにアメリカにもどったドナートが初ボーカルに挑戦したアルバムが

 1973 Quem E Quem ケン・エ・ケン(紳士録)代表作だと言われることが多い。

 

 1973 DonatoDeodato     同じピアニストであるEumir Deodatoとのコラボ作。

 1977年にはMichael FranksSleeping Gypsy」やNara Leao「Os Meus Amigs Sao Um Barato」(ナラと素晴らしき仲間たち) などにも参加しているが、それ以降、突然、姿を消して隠遁してしまう。このへんが稀代の奇人といわれるゆえんなんでしょうか。

 そのドナートさんが再び脚光を浴びるきっかけになったのが、なんと小野リサ1995年のアルバム「Minha Saudade」だったとは、望外の喜び。アルバム丸ごと、大好きだったドナートさんのスタンダード作品集で、ご自身も参加しておられます。

 2001 Brazilian Time

 2001 Remando Na Raia

 2001 Ê Lalá Lay-Ê   70歳を超えてこのみごとな脱力感。いいですねえ。

 2007 Uma Tarde Com Bud Shank  アルト・サックスの名手バド・シャンクと共演。

 2010 Sambolero

 2010 Joyce Moreno featuring Joao Donato - Aquarius ジョイス・モレーノとコラボ

 2017 Bluchanga 83歳にしてこの揺るぎなさには脱帽。

 そして「2018年最大の衝撃!」と喧伝されたのが、「Mad Doneto」である。未発表音源のみを集めた4CD-BOX。70年代の音源集に3枚のアルバム。そのうちの1枚は、ドナートのファンだった日本人の手で作られたアルバムだというからなかなかエキサイティングだ。

 2021 Joao Donato / Adrian Younge and Ali Shaheed Muhammad - Jazz Is Dead 7

 「Jazz is Dead」という注目の新レーベルが出しているシリーズ7枚目。ドナートさん、まだまだお元気なのである。