Willie Nelson

  歌の巧さは認めるけれどウィリー・ネルソンは無骨過ぎてあんまり好きじゃなかった。ロマンチックなフリオ・イグレシアスなんかにハマっていた頃のことだから、無理もないが、驚くのは甘美な「Crazy」がそのウィリーさんの曲だということだ。

 それが昨日、たまたまコンピレーションに入っていた「Stardust」を聴いたら思いのほか良くて、もっと聞きたくなってしまった。ようやくウィリーさんの渋さがわかる歳になってきたのかもしれない。

 まずは1978年のポップ・スタンダード集『Stardust』から。「ヴァーモントの月」がいいですねえ。

 1988年の『What A Wonderful World』は1曲めの途中から盟友フリオさん登場で、万人受けしやすい好アルバムに仕上がっているが、隠居は1994年の『Healing Hand of Time』のほうがしっくりきて気に入ってしまった。もし最初に出会う1枚をということなら断然これをお勧めする。

 2009年のジャズ・スタンダード集『American Classic』には、ノラ・ジョーンズダイアナ・クラールが参加し、2013年の『To All the Girls』となると丸ごと女性シンガーとのデュエット集だが、ほんとにウィリーさんって色気がなくて、ついついトニー・ベネットと比べたくなってしまう。

 2021年『That's Life』は『My Way』に続く2枚めのシナトラへのトリビュート・アルバム。そして2022年『A Beautiful Time』は、ウィリーさん89歳、なんと72枚目のアルバムだというから驚く。