Dori Caymmi

 Gregg Karukasの最新作「Serenata」2021は、初めての全曲ソロピアノ・アルバムだそうだが、これまでの小洒落たスムース・ジャズ・アルバムとはずいぶん趣が違って、静謐で美しい曲が並んでいる。ミルトン・ナシメントやドリ・カイミといったブラジルのアーティスト達の曲を集めたものだとか。このCaymmiってあの「Tom & Caymmi」のカイミさんだろうか。Tomことアントニオ・カルロス・ジョビンさんと共にボサノヴァを創り上げたレジェンドである。

 ところがいくつかのアルバムをピックアップしているとどうもおかしい。Doriの本名がDorival Caymmiなのかと思っていたら、「息子のDori」なんて表記が出てきたじゃないですか。

 つまり、ジョビンさんと「Tom & Caymmi」を作ったのはボサノヴァ創世期から活躍する父ドリヴァル氏、「Summerhouse」でもKarukas氏と共演しているのは跡継ぎ息子のドリ、ということらしい。

 早速、Dori Cymmi「Contenponeos」2004を聞いてみると、いやこれが不思議な浮遊感があって実に良いんですな。隠居の好みど真ん中のこんな大物が隠れていたとは嬉しい限り。あくなき渉猟のたまものでしょう。とりあえず世評高い「Kicking Cans」1993あたりからパワープレイしてみることにいたしましょう。