土曜の朝と日曜の夜の音楽。

 始まりは「Diana Panton for Quiet Corner」という新譜だった。ダイアナ・パントンは顔見知りだったが、クワイエット・コーナーとは何だろう。調べてみると、HMVのフリーペーパーだという。HMVは世界展開している英のレコード販売店グループである。なんて書いているが隠居はレコード店なんて行かないから、知らなくて当然。

 で、これを書籍にしたのが「クワイエット・コーナー心を静める音楽集」2014で、今年になって「2:日常に寄り添う音楽集」が出た。心を深く静める、繊細な音楽だけを集めたというこのコーナー、自分が求めている音楽そのものじゃないかと強く心惹かれるものがあった。

 なのに「Premium特別編集 土曜の朝と日曜の夜の音楽。」というMOOKを買うはめになったのは、単に少し安かったからという懐事情によるが、たまたま本屋さんで手に取れたからというのもある。こちらは”週末を心地よく過ごすための音楽”204曲。知らないアーティストがほとんどなのでワクワクしながら、どんな音か、どんな声かをチェックしていると、時間の経つのを忘れてしまう。

 例えば、”無限の国のビリー・ホリデイ” ”セピア色のノスタルジー”などと称される稀代の歌姫ALA.NI(アラ・ニ)や、LAのSSWモーリー・バーチは早速お気に入りリストに上がったが、こういうガイドブックがないと出会えなかったろうな。

 

 

 

スープジャー生活

 始めたのが2020年の1月だから、スープジャー生活も2年めの半ばを過ぎた。

 THERMOSのホームページでレシピを担当しているお弁当研究家・野上優佳子さんの『スープジャーで楽するお弁当生活』を見ながら、ジャー選びも楽しかったし、毎日の調理はぽんこつ隠居にとって何よりの刺激になった。調理といっても野菜を刻むくらいなのだが、新しい日課がひとつできたのである。

 最初は自分の朝食用だったのが、今は2人分のお昼になった以外、レシピはほとんど変わらない。白菜、玉ねぎ、茸、豆腐に、にんべんの白だしGOLD。隠し味に業務スーパーの「姜葱醤」ジャンツォンジャンを使う。病院の数値も少しずつ改善しているので、体にはいいのだろう。

 ところが昨日、さらに進化した「ハーバード式 命の野菜スープ」というのを知ってしまったのである。野菜のゆで汁には生野菜の10倍の抗酸化力があるとのことで、がん予防、認知症予防、ダイエット効果、生活習慣病予防、動脈硬化予防、骨の老化予防、ストレス緩和、便秘改善と、あらゆる効能が並んでいる。

 こちらは野菜と水だけで味付けは一切しないらしい。うーむ早速、明日からキャベツと玉ねぎと人参を使ってみることにしよう。ちょうどNHKの「がってん」でキクラゲ讃歌をやっていたので、これも加えることにする。お通じにもよいそうだ。

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 調味料ゼロの野菜スープは、思ったより癖もなく飲みやすかった。しかし残った野菜は確かに不味い。けっこうな量があるので、これをいつものスープジャーに利用することにして2日続けてみると、奥さんがお通じがいいと言う。隠居も作ったその日からいつもと違うするっと感があったのだが、やっぱりですかそうですか。キクラゲをもどすのに15分、野菜を煮込むのに20分かかるが、基本はスープジャーと変わらないので、これなら続けていけそうだ。健康はもちろん、ダイエット効果も期待したいところである。

 

 8月の検診結果が思ったより良くなく、厳しい残暑中のスープのけっこうな負担感もあって、ただいま野菜スープは開店休業状態。淡路島の玉ねぎスープを使って味はよくなっているのだが、難しいものだなあ。まあこれに頼らなくても2人ともお通じがいい感じなので喜ぶべきなのかもしれないんだけどね。

20210906

 

 

 

このごろの音楽生活

 買い物の途中、BGMで流れていた聞き覚えのある旋律に手が止まる。しばらくピアノトリオを聴いていなかったので懐かしくなって、帰ってから保存用のHDDを引っ張り出してきた。

 還暦を迎えたころ、大人のJAZZを楽しめるようになりたく、巨人たちを紹介したCD付きマガジンを購読したり、評論家の言葉を信じて「マイルス」に挑戦したりしてみたりしたが、どうもしっくりこない。もっと耳に心地よいJAZZが聴きたいだけなんだけどな。

 そんな時に出会ったのが、エディ・ヒギンズだった。表舞台のピアニストではなかったヒギンズさんに晩年の活躍の場を与えたのが、日本のジャズ専門レーベルVENUSレコードだったというのは有名な話。1998年の『魅せられし心』がピアノトリオブームに乗って爆発的にブレイクしたとき、ヒギンズさんは66歳になっていた。当時の奥さんは日本人だったそうな。

 一番のお勧めアルバムは『Bewitched』かな。

 『Ella Fizgerald Sings The Rodgers & Hart Songbook』という1956年のアルバムで、エラがこのタイトル曲を歌っているのだが、なんと優しい歌声だろう。これも「今朝の1枚」にふさわしい。

 ヒギンスさんが亡くなった翌年、入れ替わるように日本デビューしたのがビージー・アデールで、彼女は御年72歳だった。この人の癖のないピアノ・アレンジはいかにも日本人好みで、その年の最も売れたジャズ・アーティストになったそうな。この人の優しくロマンチックなJAZZは1日のどこででも安心して聴いていられる。

 ナショジォのGeniusシリーズでドラマ「Aretha」をやるというのでのぞいてみる。

 アレサ・フランクリンって正面切って聞いたことがないんだよね。入門用にいいアルバムはないかと探していると、このドラマとの連動企画だという最新ベスト盤『The Genius of  Aretha Franklinが見つかった。「Ain't No Way」っていい曲だなあ。

 最近のミュージック・ライフはこんな感じ。

 

  

 

高齢社会白書

 昨日発表された内閣府の『高齢社会白書』によると、「家族以外で相談や世話をしあう親しい友人がいない」と老人の31.3%が答えていて、高齢者の孤立が深刻な課題になっているのだという。

 なんだオレだけじゃないんだ、と思う一方、違うものがふつふつとわきあがってくるのも感じる。 ”いないことを望むキモチ” といえばいいんだろうか。”友達100人できるかな"という昔ながらの幸福論に洗脳されるあまり、隠居の心にもいないことを寂しく思ったり不安に感じたりする気持ちは確かにある。でも、本当にそうなんだろうか。そう思わされてるだけじゃないんだろうかと、このごろ思うのである。前より堂々と「友達いない宣言」をする人が増えてきているせいかもしれない。友達がいることが苦しいんだったら友達はいなくたっていいのかもしれないじゃないか。

 友達をキープするために、無理して相手のペースに合わせたり作り笑いをしてしまったり、でストレスを溜め込むくらいならと、ついつい「ないほう」を選択している自分がいる。年賀状を止めてしまったのも無関係ではない。いやそれはそれで問題ありなのかもしれないけど、陰で友達の悪口を言いながらだらだら付き合ってるよりマシだと隠居は思うのであるが。

 2週間ほどして新聞に出ていた週刊誌の見出し。

 「3割が友人ゼロって、何が問題?」に始まり、

 「60過ぎたら友人もいらない」には笑ってしまった。

 

トンイとの60日

 大好きなハン・ヒョジュがヒロインを演じて国民的人気を得た韓国ドラマ「トンイ」をCSでやるというので早速チェックすると、なんと全60話もあるという。

 もとより興味も知識もない朝鮮王朝時代の歴史ドラマである。隠居がいくら暇だからといって最後まで息が続くであろうか、などというのは全くもって杞憂であった。トンイはこれでもかと繰り出される南人(ナミン)どもの陰謀に翻弄され続け、毎回ラストは必ず絶体絶命の危機を迎える。その驚く顔を見れば、何はさておき続きを見ないわけにはいかないのである。

 それにしても、人は私欲のためにここまで策を弄して人を陥れられるものであろうか。裏読みのできない隠居などあっという間に奈落に沈んでしまいそうだが、トンイはどんなピンチに陥ろうとどこまでも真っ直ぐで揺るぎない。それが嬉しくて愛しくて、トンイに肩入れせざるをえないのですな。

 「トンイ」ロスを心配していたら、今度は同じ監督による「チャングムの誓い」全54話がスタートした。トンイよりも早く、韓国歴史ドラマブームの火付け役となった不朽の名作だという。うーむ、これも見ないという選択肢はないか。これが沼にハマるということであろう。

 (と書いた後、もしかして人生で一番心に刺さったドラマではないかと思うほど "どハマり"いたしました。日曜日毎に3話ずつの放映では待っておれず、アマゾンプライムで怒涛の一気見。いやこれを見ずして何を語らん!)

 

 

リカバリーガン

 髪を伸ばしはじめた可愛い孫にとドライヤーを検索している時だったから、同じような形のものに敏感になっていたのだろう。しかしこれは先端に大きめの球状のものがついていて、いったい何だろうと興味をそそられる。

 正体は「リカバリーガン」なるもので、アスリートが疲れた筋肉をほぐすのに使っているという。手のひらサイズの電動ドライバのような感じ。ころんと小さくて可愛い。こんな便利なものがあるなら早く言ってよお、というのも昔から肩凝りがひどくて、仕事を離れても、パートナーに揉んでもらってそのまま寝落ちするのが毎夜のことだったからだ。

 GW中の今ならポイント12倍、というキャンペーンをしていて、期限が明日までだという。いやいや隠居は「明日まで」とか「あと1個」とかに弱いんだよね。予想外の出費だが、あわよくばお誕生日祝にでもと即行でポチってしまった。

 さて土曜日に届いた小さな箱を開けると、思ったよりずっしりとした感触。安っぽさはない。手になじむ程よい大きさだ。部位によって4種類のアタッチメントが付属する。さっそく充電してみると、2時間半ほどで点滅していたランプが緑色になり、準備完了。

 背面のスイッチを長押しする。3段階あるが最初の一押しでもけっこうな振動がくる。うーむこれは気持ちいいかも。絶妙の力かげんはさすがドクターエア、以前評判になった3Dマッサージシートを既に持っているのだが、横になって手軽に使えるものがほしかったのだ。いやこれは、毎晩、くせになりそうである。

 

誤作動する脳

 陽射しの中、年配の女性がやわらかく微笑んでいる。その上に「時間感覚 失われても」というタイトル。ああまた認知症の話か、と申し訳ないが瞬時に興味が失せる。たぶん自分のことを言われるのが嫌で脳が避けているんだろう。新聞の ”オピニオン&フォーラム”で紹介された「レビー小体病当事者」の樋口直美さん。「当事者」って久しぶりに聞いた言葉だ。そういえば『当事者研究』の本を2冊買って途中で放っていたことを思い出す。

 ところが翌日、そのインタビュー記事を読んで驚愕した。夜、マンションの駐車場に車を停めると、右隣の助手席に女性が座っている。「本物の人に見えるのに、驚くと一瞬で消える」って、ど、どういうこと? これが、「レビー小体型認知症」の典型的な幻視なのだという。幽霊だと思ってお祓いに行く人もいる。「私は頭がおかしくなってしまったのかと恐怖を感じました」。39歳で異変が始まり、「うつ病」として薬で別人のようになり、50歳にしてようやく診断名がついた、その恐怖がこちらにも伝染する。 

 すぐさまアマゾンに飛んだ。ところが、著書2冊ともに金額表示がない。案の定、中古の値段もはねあがっている。『誤作動する脳』は去年出たばかりである。楽天でも「ご注文できない商品」化していて、一足遅かった。驚いたのは自分だけではなかったようだ。

 できないことが増すばかりの隠居には、自分がただポンコツになったのだという認識しかなかったが、脳の誤作動というものもあるのだと知る。これはぜひ読んでみたい。ダメモトで楽天に注文してみる。

 

 さて、ようやく届いた本を開くと、思うようにならない体調と向き合いながら丁寧に紡がれたものであろう、文章が実に読みやすい。のだが、平易な文章と内容の重さとのギャップにしばらく船酔い状態になる。

 深い珈琲の香り、香ばしい蕎麦茶、ああもうすぐパンが焼ける、隠居の生活を彩るこれらの匂いが、味が、あたりまえに知覚できることの喜び、幸福感に、衝撃を受ける。何でもない日常がいかに高度な脳の活動で支えられているのかを思い知るのである。いや、これはまさに”当事者”から届けられた驚異のレポートです。