ルイス・ボンファ

 「Bossa Nova Sambalero」(1993)というアルバムが気にいって朝によく流しているのだが、中でもマリア・トレード(Maria Toledo)の「Sambalero」のメロディが妙に心にフィットする。で調べてみると、なんだ旦那の作った曲じゃないですか。あの「黒いオルフェ」の作者、ブラジルのギタリストLuiz Bonfa氏である。

 ボンファのアルバムはあまりに多すぎて選ぶのに困るのだが、いま気にいってパワープレイしているのはボンファ夫婦共演の『ブラジリアーナ Braziliana』(1965)と、スティーヴ・ローレンス&イーディ・ゴーメによるボンファ曲集『Bonfa & Brazil』(1967)である。イーディ・ゴーメは「恋はボサノバ Blame it on the Bosasa Nova」で有名な人だが、スティーヴ・ローレンスも「悲しき足音」というヒット曲を持っていて、ダニー飯田パラダイスキングがカバーしていたそうな。こちらもご夫婦である。そのせいかみんなのびのび楽しそうで、こっちまで幸せな気持ちになる。そうか、ボサノヴァを聞くと心がフラットになって、その次にふんわり幸せの種を蒔いてくれるようなところが好きなのかなと思ったりする。

 本日はずばり「ボサ・ノヴァ」という邦題のついた『Plays And Sings Bossa Nova』(1963)を選んでみた。抜けるような冬の青空を見ながら暖かくした室内で聞くに何とふさわしいBGMだろう。

 

わが心のどら焼き

 ゆうべ『世界ニッポン行きたい人応援団』の「どら焼き」の回を見ていてあまりに美味しそうだったので、明日、歩いて買いに行こうよという話になった。歩ける距離にどら焼きが売りの和菓子屋さんがあるのだ。念のためにHPをチェックすると10〜14日までは臨時休業だったらしい。なら今日は大丈夫だろう。

 ところがどう見てもシャッターは閉まっている。そういえば定休日のチェックはしていなかったっけ。隠居はいつもそういうところが抜けている。せっかく来たのにいやはや残念至極。ならせめて、隣のパン屋さんに寄っていこう、とまだ潰れずに営業していた小さな小さなパン屋に入る。

 真っ先にメロンパンが目に飛び込んでくる。これも「応援団」がきっかけだったろうか、いつの頃からかあちこちのメロンパンを買い回るようになり、一時はほぼ毎日メロンパンを食べていた。すると血液検査で血糖値に大いに問題あり、ということになり、そこから低糖質・減量作戦に挑むはめになった。なんと40日ぶりのメロンパンである。そのせいか、どら焼きのことが頭から飛んでしまったようだ。

 どら焼きといえば、決まって思い出すのが、近鉄奈良駅前で売られていた「三笠」である。三笠の山にちなんだその名前は関西圏でのみ使われていたようで、子どものころ、直径16センチ・重さ500グラムのジャンボ三笠を切り分けて食べるのが習いだった身には、普通のどら焼きはどこか別物感が抜けない。

 今も奈良の駅前では「三笠」が売られているが、元祖の店の横に出店した京都の和菓子処がそっくり真似てジャンボ三笠を売り出したため、あえなく閉店に追い込まれたという噂がまことしやかに語られている。真横に同業種の店を出すのもありえないが、商品までパクるなんて、と昔の味を知る奈良県人はひそかに憤っている。しかも新しい店のほうがいかにも商売上手という、まるでドラマのような話だが、果たして真相はどうなのだろう。

 ジャンボ三笠を作った「湖月」は、湖月堂や鼓月という似た名前は出てくるけれど、もはや検索にもかからない。ああもう一度、湖月のどら焼きを食べてみたいと、奈良県人なら一度は思ったのではあるまいか。

ジョアン・ドナート

 Bossa Novaといえば、巨星アントニオ・カルロス・ジョビンに、並び立つジョアン・ジルベルト、といったところだが、もうひとりの天才と呼ばれながらいまいち輪郭のはっきりしないジョアン・ドナートJoão Donato については、これまでじっくり聞くということがなかった。ところが先日、「Piano Of Joao Donato - The New Sound Of Brazil 」(1965)というアルバムを耳にして、すっかりファンになった。この人の良い力の抜け加減がようやくしっくりくる年齢になったのだろうか。最近の朝のBGMはもっぱらドナートさんである。

 ボサノヴァの黎明期、1959年にはすでにアメリカに渡ってラテン・ジャズ・バンドで活動していたドナートが、一時帰国してレコーディングしたのが次の2枚。

 1963 Muito a Vontade ムイト・ア・ヴァンターヂ 28歳のセカンド・アルバム。

 1963 Bossa Muito Moderna ボッサ・ムイト・モデルナ 

  隠居イチオシのアルバムはアメリカで録音しております。

 1965 The New Sound Of Brazil  完成度の高い、これはまさに「名盤」でしょう。

 1970 A Bad Donato 

  1972年暮れにアメリカにもどったドナートが初ボーカルに挑戦したアルバムが

 1973 Quem E Quem ケン・エ・ケン(紳士録)代表作だと言われることが多い。

 1973 DonatoDeodato     同じピアニストのEumir Deodatoとのコラボ作。

 1977年にはMichael FranksSleeping Gypsy」やNara Leao「Os Meus Amigs Sao Um Barato」(ナラと素晴らしき仲間たち)などにも参加しているが、それ以降、突然、姿を消して隠遁してしまう。このへんが稀代の奇人といわれるゆえんなんでしょうか。

 そのドナートさんが再び脚光を浴びるきっかけになったのが、なんと小野リサ1995年のアルバム「Minha Saudade」だったとは、意外な喜び。アルバム丸ごと、大好きだったドナートのスタンダード作品集で、ドナートさん自身も参加しております。

 2001 Brazilian Time

 2001 Remando Na Raia

 2001 Ê Lalá Lay-Ê   これもいいアルバムだなあ。

 2007 Uma Tarde Com Bud Shank  アルト・サックスの名手バド・シャンクと共演。

 2010 Sambolero

 2010 Joyce Moreno featuring Joao Donato - Aquarius ジョイス・モレーノとコラボ

 2017 Bluchanga 83歳にしてこの安定感!

 そして「2018年最大の衝撃!」と喧伝されたのが、「Mad Doneto」である。未発表音源のみを集めた4CD-BOX。誰も聞いたことのない70年代の音源集に3枚のアルバム。そのうちの1枚は、ドナートのファンだった日本人の手で作られたアルバムだというからなかなかエキサイティングだ。

 2021 Joao Donato / Adrian Younge and Ali Shaheed Muhammad - Jazz Is Dead 7

 「Jazz is Dead」という新レーベルが出しているシリーズ7枚目。ドナートさん、まだお元気なのである。

 

 

 

年末年始の本

 年末にご贔屓の「買取王子」で本を3冊買った。

 愛知県にあるネット宅配買取サービスの会社だが、「もったいない本舗」と合わせてここで古本を買って裏切られたことがない。ほしい本でこの2店からの出品があるときは迷わず古本を買うようになった。

 前からドミニック・ローホーの「少ないもので料理する」や「少食を愉しむ」が気になっていたので調べてみると、「シンプルに生きる」という本がこの在日ミニマリストの最大のベストセラーだという。ところがアマゾンには似たタイトルがこれでもかと並んでいて困惑してしまう。

 最終的に講談社+α文庫の「シンプルに生きる 人生の本物の安らぎを味わう」を選んだのだが、これが実は「シンプルに生きる モノを持たない暮らし」「シンプルに生きる 美しいからだをつくる」「シンプルに生きる ストレスからの解放」を”再編して文庫化”したもの、だというから驚く。他にも「シンプルに生きる 変哲のないものに喜びをみつけ、味わう」という本まであるから、読む前にいささかげんなりである。

 2冊めの大原扁理という名前は大垣書店で知った。「いま台湾で隠居してます」というタイトルが目を引いたのだが、この人も「20代で隠居 週休5日の快適生活」「思い立ったら隠居 週休5日の快適生活」「隠居生活10年目 不安は9割捨てました」「年収90万円で東京ハッピーライフ」「年収90万円でハッピーライフ」と似たタイトルが並んでいる。文庫版の「思い立ったら隠居」が「20代で隠居 」の ”随所に書き下ろしを増補し、描き下ろしイラストを加えたもの" だと知ってこちらを注文。

 この本の中で初めて「ロー・プロファイル」という言葉と出会ったのだが、扁理氏の実践する”目立たず控えめに暮らすライフスタイル”は、まさに隠居の憧れそのものではないか。

 3冊目が前からほしかった、こだまの「いまだ、おしまいの地」。講談社エッセイ賞を獲った前作より文章が上手くなっているのに驚く。すっかり偏屈になってしまった隠居の心にもストレートに沁みる、数少ない作家さんのひとりである。

 たいして安くなっていないので現在保留中なのが、沢野ひとしの「ジジイの片づけ」

1760円。沢野ひとしももうジジイなのかと思うと感慨深い。半額になったら買う。

 

 本日購入した”新年最初の本”は、ネルノダイスキなる人のコミックスである。phaの日記「面白かった本2021」で紹介されていた「いえめぐり」の表紙を見て、面白そうだったのでアマゾンをのぞいてみたのだが、出ていたのは2冊のみ。しかも、もう1冊の「ひょうひょう」という本はなんと2445円もする。

 出している「アタシ社」は夫婦2人でやっている出版社だそうで、HPをのぞくとなかなか興味深い。通販もやっていて、ここなら正価1430円というのはどういうことかね。しかも、「本屋からもどってきたものなので古本扱いします」と600円+送料の値がついているではないか。迷わず注文ボタンを押してしまった。

 noteに「ひょうひょうができるまで」の長い連載があったので読んでみると愛着がわいてしまい、新本で買えばよかったかなと反省。もしかしたらもう1冊、新本でいただくことになるかもしれない。

 

 

ルーティーン

 朝刊連載の益田ミリ「オトナになった女子たちへ」が10周年を迎えたそうな。「さまざまなできごとによって人の心は変化していく。わたしもまた次の10年で変わっていくのかもしれません」とあって、そういえば退職してもう10年になるんだ、としみじみ思う。この10年で自分はどう変わったろう、などと考えてみるのもいいかもしれない。

 仕事から解放されて生まれたマイ・ルーティーンがたくさんある。せっかく縛りが解けたのになぜ?と若い時なら思うだろうが、その規則的な繰り返しが心地よい年齢になったのだ。

 朝起きたらすぐに、音楽を流して舌みがきと鼻うがいをする。鼻アレルギーは持病といっていいものだが、サイナスリンスの鼻うがい効果は抜群である。プーアール茶で喉うがいをするのはつい最近始めた。痰をきる効果があるらしい。そもそも自分が痰を切らねばならない爺さんになるなど10年前は想像すらしていなかった。老人には老人にしかわからない労苦があることは老人にならないとわかんないんだよね。

 朝珈琲の代わりにはお白湯を飲む。これもアーユルヴェーダ流である。

 朝食はオートミール+青汁+玄米フレーク+米油で、今朝、初めて目標の72キロを切った。血糖値が高いと言われて始めた減量作戦だが、10日めで第一目標達成はなかなか気分がアガる。次は、10年前の減量でもかなわなかった「70キロ突破」である。

 平日のお昼はほぼスープジャー。野菜たっぷりの、生姜を効かせた白だしスープを奥さんのと2人分作る。

 時間があればフローリング・ワイパーを持って家の中を動く。先日からこれに長いコロコロが加わった。できるだけ外も歩くよう心がける。朝の光を浴びるために家の周りをぐるっと歩くこともあるし、週に2回のポスティングで町内を1周すると軽く6000歩を超えるので、これも良い運動習慣になっている。

 湯船につかりながら始めたのが、ヨガの片鼻呼吸(ナディーショダナと言うと何となくカッコいい)。自律神経を回復させてくれるという。1日を振り返って心をリセットするための「スリー・グッド・シングス」も、まだ時々忘れてしまうが、定着させたいと思っている。今日できたこと・楽しかったこと・感謝することを3つ、紙に書く。効果は実証されているらしいが、3つ以上では効かないというからおもしろい。

 眠くなったら寝られる、というのが退職後の最大の変化だろうか。どんなに眠くても起きてノルマを果たさねばならないのが仕事というものである。その結果、お決まりの「不眠症」になった。眠れないなら寝ないでいいさと開き直るしかない病気だが、そうすると昼間、眠くてたまらない。ものが考えられなくなる。まともに仕事ができなくなった。仕事を離れてからも、睡眠をとりもどすのに長い時間がかかった。

 最近、枕をゲルに変えてから何時間も続けて眠れるようになり、時には朝まで起きないこともある。これが何とありがたいことか。

 こうして振り返ってみるとこの10年は、仕事でボロボロになってしまった自分をゆっくり取り戻す時間だったのかな、という気がする。そのために体を整え、心を整え、試行錯誤しながら、行き着いたのが今のルーティーンたちなんだろう。

 仕事をしているときにはどうしても必要だった重い鎧をきれいさっぱり脱ぎ捨ててみると、幼いころの柔らかく引っ込み思案な自分がいる。そのまんまでいいじゃないか、と今なら思える。強がることを捨てて、弱いままで生きていく勁さを得たことがせめてもの年の功なのかと思うのだ。

 

 

 

土曜の朝と日曜の夜の音楽。

 始まりは「Diana Panton for Quiet Corner」という新譜だった。ダイアナ・パントンとは浅からぬ顔見知りだったが、クワイエット・コーナーとは、はて何だろう。

 調べてみると、HMVのフリーペーパーの名前だという。HMVは世界展開している英のレコード販売店グループである。なんて書いているが、隠居はレコード店なんて行かないから知らなくて当然かも。

 で、これを書籍にしたのが「クワイエット・コーナー心を静める音楽集」2014で、今年になって「2:日常に寄り添う音楽集」が出た。心を深く静める、繊細な音楽だけを集めたというこのコーナー、自分が求めている音楽そのものじゃないか、と強く心惹かれるものがあった。早速アマゾンに飛ぶ。

 なのに結局「Premium特別編集 土曜の朝と日曜の夜の音楽。」というMOOKを買うはめになったのは、少し安かったからという懐事情にもよるが、次の日たまたま本屋さんで現物を手に取れたからというのもある。ネットでだけ見て買うというのは今でもどこか心もとない。

 こちらは”週末を心地よく過ごすための音楽”が204曲、まあ似たようなものだろう。

 知らないアーティストがほとんどなのでワクワクしながら、どんな音か、どんな声かをチェックしていると、時間の経つのを忘れてしまう。初めて聞く曲は、どれも耳に新鮮で心地よい。

 例えば、”夢幻の国のビリー・ホリデイ”・ ”セピア色のノスタルジー”などと称される稀代の歌姫ALA.NI(アラ・ニ)や、LAのSSWモーリー・バーチなどは早速お気に入りリストに上がったが、こういうガイドブックがないと出会えなかったんじゃないかな。

 

 

 

スープジャー生活

 スタートが2020年の1月だから、スープジャー生活も2年めの半ばを過ぎた。

 THERMOSのホームページでレシピを担当しているお弁当研究家・野上優佳子さんの『スープジャーで楽するお弁当生活』を見ながら、最初のジャー選びも楽しかったし、毎日の調理は何よりの刺激になった。調理といっても野菜を刻んで鍋に放り込むくらいなのだが、ぽんこつ隠居に新しい日課がひとつできたのである。

 最初は自分の朝食用だったのが、今は奥さんと2人分のお昼になった以外、レシピはほとんど変わらない。白菜、玉ねぎ、茸、豆腐、卵に、にんべんの白だしGOLD。隠し味に業務スーパーで人気の「姜葱醤」ジャンツォンジャンを使う。病院の数値も少しずつ改善しているようなので、体に悪いものではないのだろう。

 ところが昨日、さらに進化した「ハーバード式 命の野菜スープ」というのを知ってしまった。野菜のゆで汁には生野菜の10倍の抗酸化力があるとのことで、がん予防、認知症予防、ダイエット効果、生活習慣病予防、動脈硬化予防、骨の老化予防、ストレス緩和、便秘改善と、あらゆる効能が並んでいる。

 こちらは野菜と水だけで味付けは一切しない。うーむ、さっそく明日からキャベツと玉ねぎと人参を使って試みることにしよう。ちょうどNHKの「がってん」でキクラゲ讃歌をやっていたので、これも加えることにする。お通じにとてもよいそうだ。

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 調味料ゼロの野菜スープは、思ったより癖もなく飲みやすかった。しかし残った野菜はいたって不味い。けっこうな量があるので捨てるわけにもいかず、これをいつものスープジャーに利用することにして、2日続けると奥さんがお通じがいいと言い出す。そういえば隠居も、作ったその日からいつもと違う感じがしていたのだ。

 キクラゲをもどすのに15分、野菜を煮込むのに20分、と時間は倍ほどかかるが、基本はスープジャーと変わらないので、これなら続けていけそうだ。健康はもちろん、ダイエット効果も期待したいところである。

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 しかし、8月の検診結果は思ったよりよろしくなく、厳しい残暑の中の熱々スープは勘弁してほしいという訴えもあって、ただいま野菜スープは開店休業状態である。淡路島の玉ねぎスープを取り寄せて味はよくなっているのだが、難しいもんだなあ。

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 といった倦怠期を乗り越えて、スープジャーは今も、というより寒くなった今だからこそ、もとどおり健在である。気分を変えて液体みそに挑戦したり、残りご飯がオートミールになったりしながら、まもなく3年めを迎えようとしている。オートミールの整腸効果はてきめんで、ダイエットの大きな助けにもなっているようだ。