クワイエット・ストーム

 "クワイエット・ストームの貴公子"と呼ばれるKemの新しいアルバム『Love Always Wins』2020に、なんと大好きなトニー・ブラクストンとのデュエットが入っているというので、さっそく聴いてみた。引退を考えていた彼女がベビーフェイスの助けで復活のアルバム『Love, Marriage, & Divorce』を出したのはいつのことだったろう。

 するとまさかまさかのトニーの新譜『Spell My Name』が同じ年に出ているじゃないですか。おそらく人生で一番パワープレイした曲「Un-Break My Heart」はこの人のものである。全アルバムを網羅して追っかけをしていた頃が懐かしい。

 しかし、"クワイエット・ストームの女王"は残念ながらトニーさんではなく、Anita Bakerなのだという。

 クワイエット・ストーム旋風を巻き起こしたという『Rapture』1986、『Giving You the Best That I Got』1988、『Compositions』1990、『Rhythm Of Love 』1994をまとめて聴いてみる。

 最後の『Rhythm Of Love 』なんてまさに女王様の歌い方だなあ。堂々たるものである。隠居はジャケも含めて『Compositions』がお気に入りだったのだけれど、貫禄すら感じる圧倒的名盤といえばこちらかもしれない。さらに10年のブランクを経てリリースされた『My Everything』を聴かないわけにはいかなくなりましたよ。

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『My Everything』は、人生経験のあれこれを乗り越えて、肩の力がいい感じに抜けた、さすがのアルバムでありました。その後、Lisa StansfieldやAnglie Stone、Faith Evans、Shirley Jones、Phyllis Hymanなど、クワイエット・ストーム系を回遊してからもう一度『Rapture』を聴くと、アニタさんの凄さがよくわかります。