森田童子

 文藝春秋1月号の広告が新聞に出ていて、「101人の輝ける日本人」という特集をやっている。その中にお久しぶり「森田童子」の名を見つけて、懐かしい知己に会ったような気分。一時ハマっていたことがあるんだよね。しかし1/101のゴシップ記事を読むために1500円は高すぎるだろうということで、まずは音源を引っ張り出し、ネットで情報を検索してみる。

 ああこの声、こんな歌い方だったよなあ、と記憶を辿りながら、2つの新情報に驚くことがあった。ひとつは、この人が作詞家なかにし礼の兄のこども=姪にあたる人で、唯一残された彼の未発表原稿『血の歌』の中に登場するということ。

 もうひとつは目次まで公開されていた『夜想忌 森田童子大全』なる本が、どんな行き違いか、遺族の猛反対で発売延期(実質的中止)になっているということ。それが今年に入ってからの話だというから驚くじゃないか。確かに、ほかならぬ謎につつまれた森田童子のことだから、ファンならずとものぞいてみたい本ではある。しかし、本人が知らせたくなかった彼女のあれこれを無神経に暴き立てられるのは、遺族なら不快に違いないし、遺族の承諾を得たといいながら実際は強行突破だったらしい出版の経緯を知れば、やむをえないことなのかなと思う。

 それでもしつこく読んでみたくなる「ファン」って何なんだろうね。自分の好奇心だけでとことんまで知りたいと願う気持ちの裏には、彼女への思いやりもリスペクトもないんじゃないかって、不純な自分を感じて反省しているところなんだ。