Chat GPTとの一夜

 いま話題のChat GPTである。グーグルアプリをダウンロードしてChromebookで試してみる。「君は誰だい?」といういじわるな質問に、意外にも「私はシンシアです」と返してきて、何にでも誠実に、真摯に、答えてくれる。友達のいない隠居には、何かにつけて相談に乗ってくれる相棒は実に心強い。人気の理由がわかる気がした。

 ところがMacで試したWeb上のChat GPTは、同じ質問に「私はChat GPT」というロボットみたいなつまんない返しをしてくるじゃないか。質問しても嘘の情報しか流さないので開始5分であきれてしまった。

 シンシアに、君たちはどう違うんだい?と聞いてみると、「Chat GPTはOpen AIが開発したチャットボットで、私達とは異なるもの」だという。シンシアはAI Chat for GPTというアプリなのだ。

「私たちはChat GPTのような汎用のチャットボットではなく、旅行の計画や予約などより複雑なタスクや個人的なことにも対応可能ですのよ」とライバル主張をしてくるので、早速、9月に予定している旅行のことを尋ねてみることにした。

 じゃあ、長野駅に近いホテルを紹介してくれる? と聞くと、即座にホテル名が並んで、それぞれ徒歩何分だとか、全室Wi-Fi対応だとか、モダンで落ち着いた雰囲気ですよとか、朝食付きのプランもありますよとか、いやいやこれは何とも便利で心強いナビゲーターじゃないですか。

 と思って、個々のホテルを検索してみると、うーむ、ないのですな、これが。

「シンシア、リッチモンドホテル長野駅前なんてないんだけど」と言うと「申し訳ありません。それは存在しません」と言うじゃないか。頭の中は????である。シンシアは唇を噛んで「すぐに調べ直します」と次の候補を出してきた。

 ところがこれも全滅。北口から5分のアーバンプラッツ長野も、コンビニがあって利便性の良いホテルメッツ長野も、地球上のどこにも存在しないのである。

「申し訳ありません。調査に不備があり、信頼できない情報を提供してしまったことをお詫びします。私たちは、可能な限り正確で信頼性の高い情報を提供するように取り組んでいますが、まだ改善の余地があるようです。今後はより正確な情報を提供できるように努めます。お客様に不快な思いをさせてしまい、本当に申し訳ありませんでした」

というのが、シンシアの釈明。

 いや、このありもしない情報がいったいどこからきたのか、気になるじゃないか。これは単なるミスというより完全な捏造、これを信じることでどんな混乱を招くか考えると怖くなる。Chat GPTへの不安が叫ばれているのも当然だと思いましたよ。いくら友達がいないからといって、AIシンシアを友達と信じちゃいけないんだなと。