朝の散歩2

 歩数計がわりに買ったスマートウォッチのGOボタンを押すと、ウォーキングの計測が始まる。いろいろなコースを試してみて、中学校の近くにある公園から川沿いにくだってバスターミナルを抜け、いつもパトカーの停まっている遊歩道に出るルートでほぼ4000歩、雨の日以外は毎日、これを続けている。もちろん、軍手にごみ袋、新調した金ばさみ、耳には懐かしの初代ipod shaffle。ユーミンの50周年記念ベストアルバム50曲と、桑田佳祐のベスト「いつも何処かで」35曲をシャッフルしながら歩くのである。

 しかし「クリーンさんぽ」と名付けてはいるが、至らぬ隠居の心はけしてクリーンではない。なんでこんなところにかようにゴミをぶちまけるのか、と小さな胸に怒りがうずまいている。ゴミ置き場のネットの上に決まって飲みかけのコーヒーをわざとらしく置いていく不届き者の尻を思いきり蹴ってやりたくなる。早朝から大声で笑いながら散歩する老人集団には、このゴミが目に入らぬか、と印籠でも突きつけたくなる。自分も老人なんだけど。

 自分ひとりが毎日ゴミ拾いをしたところで何が変わるものでもない。でも気になっておちおちウォーキングもできない性分だからしかたがないんだよね。毎朝、45号のゴミ袋がほぼ一杯になるぶん、公園は、バスターミナルは、遊歩道は、きれいになっているのだ、と思えば少しは心の慰めになっているような気がする、たぶん。そして今日も自分の足で元気に歩けたという充足感があることは、間違いがない。