カルトーラ

 ブラジルのカーニバルに参加するダンス・パフォーマンス・チームの中で、現存する最古の「マンゲイラ」を創設したメンバーの一人。サンバ歌手・作曲家としても知る人ぞ知る存在だったらしい。”サンバ界の最重要人物”という表記を何度も見かけた。いつも山高帽をかぶっていたところから「カルトーラ」と呼ばれているというのもいかにも伝説的人物らしい。

 裏方に徹していた彼が、初めて自作のソロアルバムを録音したのは1974歳、66歳の時だった。そういえば隠居が敬愛するジミー・スコットさんも、再ブレイクは66歳の時。いやこういう苦労話、好きだよねえ。

 それから3枚のアルバムを出して、カルトーラ氏は1980年に死去、72歳だった。いまAmazonでも「カルトーラ1集・2集 人生は風車〜沈黙のバラ」「愛するマンゲイラ」、70歳を記念したアルバム「Cartola 70 Anos」が出ている。

 わが家でもただいま目覚ましのパワープレイ中だが、彼のまったく歳を感じさせない乾いた声を聞いていると、ちっぽけな悩みなんてばからしくなる。人はどうせいつか死ぬのだ。腹を立ててみたところでどちらも幸せになることはないし、思い悩んだとて何になろう。このごろこういう感覚を忘れていたな、という気にさせてくれるんだ。