朝の公園にて

 東京から帰った翌朝、ひさびさのクリーン散歩である。

 さすがに1周間もたつと道端にゴミは点在し、公園の荒れようもいつも以上だが、今日は家を出るのが遅かったせいか、人の顔ぶれがすっかり違っている。

 いつもならバットを持った父と子の早朝特訓に、犬の調教に余念のない御婦人に、なぜか朝からベンチで居眠りをする老夫婦にと、まだ朝の静けさは保たれているのだが、今日は小径を歩いている時から、犬の鋭い鳴き声に混ざってけっこうなざわめきが響いている。

 のぞいてみると、グランドは老人と犬のサロンと化していて、そこここに人溜まりがあり、「お名前は何と言うのですか?」「ははあ、エルザさんですか」と老人のひときわ通る声が明るく飛び込んでくる。

 複数のベンチの並んだ休憩所はなかなかの惨状で、この公園の常連である「切り裂きジャック」氏が今朝も派手にやらかしてくれているので、トングで1つ1つまみあげていると、グランド側に体操着のマダムがいて、犬を応援しておられるのであろうか、推しを前にした女子高生のようにはしゃぐ声が聞こえる。

 このゴミの散乱する中で、健康的で明るく元気な老人とマダムたちは豊かに交流を深めておられるようだが、これだから俺は友達がいないんだろうな、と思いながら隠居は黙々とゴミを拾うのみである。

 するといつのまにか姿の見えなくなった先程のマダムが近づいてきて、「いいですか?」とわが手のゴミ袋にゴミの束を押し込んでくる。うーん、それも何だかあんまり嬉しくないんだよなあ。先の御婦人のように「いつもごくろうさま。ありがとう」という声かけは潔いものだが、私もちょっといいことをしました、みたいな顔をして人のゴミ袋にゴミを押し付けていくなんて、ちっとも気持ちいいことじゃないんだけどな。

 やっぱり明日からもとの時間にもどそうと、思いながら帰路につく。