コロナ

 遠いニュースに思っていたコロナが家の中で発生してはじめて、これは他人事ではないと思えるんだよねえ、なんという共感力のなさ。

 昼間から珍しく家内が横になりたいというので様子を見にいったら、やけに顔色悪く、熱を測ると38度を超えている。もしやとこの日のために用意した簡易検査キットを持ち出してみるが結果は陰性でほっとするも、念のためにかかりつけ医で診てもらったら、やっぱりコロナだというじゃないか。

 いちやく濃厚接触者になった隠居は、日々の鼻うがい習慣が効いているのか、折々に体温を測ってみてもいつまでも平熱である。しかしいつ発症するとも限らないので、自ら半隔離の生活を送っている。

 タイミングよく新聞では、津村記久子さんが「なったら本当に嫌なものだとだけは確実に言えます」と書き、テレビでは1年半たっても後遺症が残る人のニュースをやっていて、やはりインフルエンザとは格が違うようだ。津村氏いわく「風邪はこんなに厄介で、まとわりつくように嫌らしくて、人の体を症状でもてあそぶような気持ち悪い性格はしていない」。

 旅行が来週に迫っていることを案じて、家内は電話でせっせと延期の手配をしている。だめなときはしゃーないと簡単にあきらがちな隠居は、こういうときちっとも役に立たん奴だなあと複雑な顔で腕組みするばかりである。